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第116回医師国家試験に向かって







Dr.りょう

 116回医師国家試験を受験した皆さん、お疲れ様でした。試験が終わって数週間経過し、きっと今頃は羽を伸ばし次のステップへの準備をしていることでしょう。 すでに次年度に向けて走り始めている人もいるかと思うので、さっそく今年の医師国家試験を総括・分析してみようと思う。
 すべての問題を解いてみた印象を一言でいうと、『良問が多くなった』ということだ。 総合的な知識を問う問題が増え、しっかりと考えさせ、確実な知識がなければ解答を導けない問題が多くなった。 問題文のキーワードから一瞬で解答できるもの(いわゆる瞬殺問題)や、選択肢の消去法で解答できるもの、診断名が分からなくても選択肢から当然に選ぶことができてしまうものなどが少なくなっていた。
 また、誤りの選択肢も明らかに見当はずれなものが少なくなり、選択肢からある程度、正解を絞るということも難しい問題が多くなった印象だ。 これらの点から、受験生の皆さんは難しい(手応えがある)と感じたのではないだろうか?
 試験問題の質が上がることは、努力が正当に評価されることになるので、大変喜ばしいことだ。
一方で、いい加減な知識では太刀打ちできなくなっていることを考えると、より確実な知識を日ごろから得ることを意識した勉強を行わなければならなくなってきているとも言える。
では、詳しく分析し、今後の勉強方法(対策)を考えてみようと思う。



1.診断する能力(手順)を問うものが多い。

 訴えをもって来院した患者さんに対し、『どのようなアプローチ(検査など)で、どのように診断を得て、どのような対応をするのか?』を問う問題が多くなっている。 これは、医師になって行う総合診療科の外来診療のような、診断の順序を聞くもので、より実践的なものである。

 具体的には、問題文中で「まず、行うものはどれか?」「次に行うものはどれか?」、「さらに行うものはどれか?」などと聞かれているものだ。以前から救急外来などでの初期対応を問われることはあったが、それが一般外来診療での対応にまで広がってきた印象だ。
 『まず行う検査・処置は?』『次に行うことは?』『さらに行う検査は?』など臨床現場に出たときに、当然に必要なこと、考え方である。今までは、現場で身に付ける技術であったが、これが国家試験で問われるようになってきているのだ。なかなか手ごわい。

 

 今回の116回医師国家試験では、これらの問題が約30問あった。ちなみに10年前の106回医師国家試験で調べてみると15問程度。このことからも、今後、よりその傾向が強くなってくるだろうと思われる。実践的な問題で良問が増えることは喜ばしいことだが、机上の勉強だけではなかなか対策が難しくなってきている。

 では、これらの問題に対する対策はどうすればよいか?これがなかなか難しい。
まず、「実習を大切にすること」があげられるが、それですべては解決しない。(おそらく、この大切さに気付いたときにはすでに実習が終了していることが多いだろう)
 対策として、一番良いのは、臨床問題を解いているときになるべく、具体的に問題に登場した患者さんを想像することだろう。

 

 例えば、「30歳女性の腹痛」でも、独歩できたのか?救急外来にきたのか?はたまた、病院の入口で車いすを借りて車イスで診察室に入ってきたのか?前かがみになって入ってきたのか?どこを抑えているのか?吐き気があるなら口元を抑えているのか?などなど、診察室に入ってきたときの状況を想像すること。また、得られた検査結果や画像から、こんな感じだろうと想像しながら過去問を解いていくことが重要だ。

 臨床問題を解くごとに、新しい患者さんが目の前に現れて、診療・治療をイメージの中で行うことができれば最高である。実際に目の前に苦しんでいる患者さんを、いかにしたら救うことができるか?そこを考える力が必要なのである。
 このように考えてみると、本当に全力で患者さんを救いたいと思える人が合格できるという素晴らしい試験になってきているとも考えられる。



2.画像問題は相変わらず多い。

 最近の顕著な傾向であるが画像問題がやはり多くなっている。一般・臨床実地問題では特に顕著で116回医師国家試験では、画像問題は約90問あった。これは全体の約30%にもなる。これは落とせないし、対策をしっかりしなければならない。 すべての画像は難しいが、多くの画像は見ただけで、その疾患名がわかるレベルにしたい。画像を見て診断名が分かれば、極端な話、問題文を読まなくても解答を得られる問題も多いからだ。

 

 では、どのように画像問題の対策をすべきかであるか?
 あくまで、合格するためにはという話であり、国家試験で満点をとりたい人は聞かないでほしいのだが、私は独自に画像の参考書やアトラスなどを購入して勉強する必要はないと考える。(ただし、皮膚科は過去問だけでは足りないので、アトラスを見ておくべきとは思うが。)

 国家試験の過去問10年分くらいを繰り返し行い、すべての画像の特徴を暗記してしまうことが近道である。
画像の内容を検討すると、以前は過去問とまったく同じ画像が出題されることがあったが、さすがに同じ画像はなくなった。しかし、それでも過去問と同じような画像の出題は多い。


 例えば、116A23112A16できちんと見ていれば細胞質にアズール顆粒、Auer小体を認める細胞の増加を認めることから『急性前骨髄球性白血病(APL)』であることがわかるので、治療法を聞いている問題は瞬殺であった。

112A16.jpg
116D65114F43103D54などをきちんと見ておけば、少なくともマクロファージがなんか貪食していることがわかるので、『血球貪食症候群』ということがわかり、フェリチンが上昇する疾患としてまとめておけばおのずと解答は導ける。

112A16.jpg
116D71も、血腫の形が三日月型か凸レンズ型の違いだけでだが、109I24でしっかり検討していれば問題ない。


112A16.jpg

とにかく過去問で出題された画像はすべてチェックすることは最低限、必要である。それが全てできたら、独自のアトラスなどで勉強してみてはいかがだろうか。


 

3.公衆衛生は過去問にプラスαを。

 公衆衛生は、社会の最新の問題を細かく聞いてきている印象だ。
社会保険制度(B10)、地域保健医療(C5)、労働災害(C32)、出産・育児(C35)、労働安全衛生法(E20)などまんべんなく問われている。
特に労働災害や労働安全衛生法関連問題などは、細かいことを問われていてなかなか難しい。

 

 普段から時事ニュースをチェックしておくことも重要だが、問題を解くセンスも必要だ。 例えば、「健康の保持増進のための措置について誤っているのは?(E20)」の問題では、「健康についての措置なので、従業員の人数で判断するのはおかしい。全ての事業場で必要なのでは?」と考えを巡らせれば解答に近づける。
 いずれにしても、公衆衛生は過去問だけでは対応できなくなっていることは確かだ。
また、問題数も多くなり、その比重が大きくなってきているので、早めの試験対策を行いたい。

公衆衛生の対策が後手に回ると厳しい結果となってしまうため、マイナー科目の一番手には勉強を始めることをお勧めする。今後、公衆衛生で合否がわかれる可能性があるからだ。

 

 

4.常識を忘れない。

 より実践的で臨床的な問題が多くなっている影響で、「そりゃそうでしょ」的な常識ある対応を問われる問題が少なくなってきている。以前からあるいわゆる常識問題というものだ。
とはいえ、少ないながらもまだ出題されてはいるので、この分野での取りこぼしは危険だ。
この種の問題については、あまり考えすぎずに素直な心を持ち、変に裏を読まないことが大切である。
木を見て森を見ずにならないようにしたい。

 

具体的には次の様な問題だ。
116D21の「緊急大動脈弁置換術の適応とならないものは?」。これは冷静に考えれば「昏睡状態の患者さんに行うのか?ましてや緊急で?」と、考えればわかる問題である。
116B30の「80歳の患者さんが夜中にトイレに行こうとして転倒した対応」を問われている問題も、「離床センターの使用」を素直に選ぶことができるのではないかと思う。
116B46の「医師の説明で省略できるものは?」の「研究段階の医療の概要」も落ち着いて考えれば問題なく選ぶことができるのでは。

 このような常識的に考えれば正解を導ける問題は、ほぼすべての受験生が正解するため、取りこぼさないことが非常に重要である。
 おそらく大丈夫だと思うが、もし間違えてしまう可能性があるとすれば、国家試験会場という特殊な場面で周りが見えなくなってしまう場合である。そのための対策として、場慣れということを考えると模試などを受験しておくことも必要かもしれない。

 

 

5.心を問う問題は少なくなってきているが。

 今回の医師国家試験では、医師または人として患者さんに対してどのように対応・行動するかという心を問う問題が少なくなっていた。少し寂しい気がするが、問題の分量配分の関係で仕方がなかったのかもしれない。

具体的には、「末期がんの患者さんへの寄り添う態度」、「プライバシーに配慮する行動」、「せん妄や認知症患者への人権を尊重する対応」、「検査拒否の患者への対応」、「問題のある研修医の言動」などだ。最近の傾向としてはこの手の問題は増加していたので、ちょっと意外ではあった。
 それでも、悪い知らせの伝え方(E50)など、出題はされてはいたので、今後も引き続き、注意はしたい。ただし、これも特別な対策は必要なく、過去問対策だけで十分だと考えられる。

 

 

6.計算問題対策は今まで通り。

 計算する問題は、5問出題されていた。これらについては、尤度比の計算などを含めてどれも特別な対策はする必要はないと感じた。新作の問題も、その場で落ち着いて計算すれば問題なく解答を得ることができるものであった。
 今回、問われることはなかったが、次回以降の対策として改めて、過去問で問われている「肺胞気―動脈血酸素分圧格差(A-aDO2)」、「BMI」、「呼吸機能検査関連」などの計算問題は確実に解答を得られるよう準備をしておきたい。

 

 

7.英語問題対策は特に必要なし。

 今回も英語の問題が数題、出題された。今後、問題数が増加するかは分からないが、引き続き何問かは出題されることは確実だ。
では、どのような対策をすべきであるか?これも特別な対策は必要ないと考える。
英語の内容は中学生レベルであり、文章だけでなく画像があることが多いので、画像からだけでも解答を導けるからだ(そのように考えると画像診断がより重要であるともいえる)。


 例えば、116A61はMRI画像から脳梗塞であることがわかる。問われているのは心電図の診断であるので、脳梗塞を起こす可能性のある心電図の異常を考えれば自ずと正解にたどり着ける。
116E38は、21歳の若年男性の2週間前から悪化する(突然発症でない)胸痛であることがわかれば診断は絞られる。この問題にもレントゲン・ECGがあるので、問題なく解答を得ることができると思われる。
 英語の問題だからと特に意識して区別せず、きちんと日本語で勉強をしていれば対策としては十分であると考える。

 以上が、私の116回医師国家試験の分析・総括だ。
 来年に向けて、日ごろから確実な知識を身に付ける勉強を続けていただければと思う。

頑張れ!

 


Dr.はやと

 産婦人科問題に関してはオーソドックスな問題と新しいようなタイプの問題がちりばめられていた。 昨年は卵巣悪性腫瘍各論が複数問出題されて度肝を抜かれたが、今回は典型的な卵巣癌や子宮体癌、子宮頸癌の出題がなかった。

 その一方で周産期に関しては助産師国試のような細かい分娩経過を問う問題もあり、GBS陽性妊婦の対応など新作もみられた。 労働基準法だけではなく育児休暇や就労について、さらに死産届に関してなど公衆衛生的な切り口でも新作がみられた。

 小児科はオーソドックスな問題が多かった印象がある。最近流行りの乳幼児の正常所見・異常所見・循環不全を疑う所見などは今年も出題された。そしてやはり感染症系からも複数問、出席停止基準やリンパ節が腫れる疾患などが狙われた。虐待に関しては違う観点から出題された。

 全体的に見渡すとアナフィラキシーショック系や伝染性単核球症、多発性嚢胞腎など同一疾患の問題が複数みられ、新型コロナウイルス関連を匂わせる問題も複数問みられた。また、最近必ず顔を出す英語問題も少なくとも3題みてとれた。

 今年は臨床問題や臨床連問の部分で突然字体の変更があったり、謎の行間やスペースなど例年ないような違和感を覚えたこともたしかである。また、選択肢も実に微妙で日本語の問題であったり、解答を決めきれないような難問、いわゆる割れ問になりそうな問題も多そうで、受験生の皆さんも苦労した問題が例年よりやや多かったのではないか、という印象を持ちました。



第115回医師国家試験に向かって

Dr. 東田による講演(第115回の総括と第116回に向けての提案)





 




国試を振り返って

Dr. 東田による講演(第114回の総括と第115回に向けての提案)

講演「第115回医師国家試験に向けて(第114回医師国家試験を振り返って)」Dr.東田(44分)

 


Dr.K

 第114回医師国家試験を受験された皆さま、お疲れ様でした。


 試験当日にMACに寄ったら、東田先生、はやと先生らが問題を解いていらして、私も加わらせていただいた。今回の国試も、受験生に対して程よい厳しさと優しさがあり、資格試験のあるべき姿として全般に歓迎される内容であった。
 
 さらに今回、必修が比較的容易だったことは素晴らしいと思う。第111回のように、必修で獣を罠にかけるような悪問が出題されて必修落ちが増えた場合、受験生としてはどれだけ優秀でも番狂わせで落とされる恐怖が生じ、いくら国試対策をしても安心できず、ポリクリ中でも国試対策問題を解いて目の前の実習が疎かになり、本来のポリクリ重視のための必修導入の意義が本末転倒になっていた。  

 これからの国試はむやみに低学年から対策せずとも、6年春~夏までは実習やクリクラに専念し、じっくり医学的素養を涵養し、その後に国試対策をすれば十分だしその方が合格確率も上がるだろう。ただ、国試対策にはコツがあり、孔子の言う「学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、思いて学ばざれば則ち殆し(あやうし)」を意識すべきであろう。以下に詳述する。
 
「学び方」としては、あやふやな知識は無いのと同じで、いい加減にではなくカチッと覚えないといけない。膨大であるから、病態生理からアプローチしたり、ゴロを活用したりも有効であり[1]、縁があればイメージやこじつけによる覚え方も伝授したい。状況記憶も重要であり、ポリクリで体験すること自体が記憶に残る。今回、不合格だった方は勉強仲間を募って時々、出題し合うことが大事だと思う。独りでやるより印象に残るしモチベーションも高まるから。
 
 また、iPad動画等で勉強する人も増えたが、それを中心にするのはどうかと思う。ペンフィールドのホムンクルスで知られるように、脳は手に対応する領域が多いため、板書等で手を使うこと自体が頭を使うことになる。加えて、スマホ学習等で視野が狭いと記憶に不利になる(詳細は「記憶 視野」等で検索されたし)。もちろん、補助的学習としてネット動画を活かすことを否定はしない。

 「思い方」は東田先生のおっしゃる「思考力」と重なり、なかなか一朝一夕にはいかないが、例えば医療のゴールデンスタンダードは「非侵襲的な検査・手技から侵襲的へ」という流れであり、臨床問題を解く際に、今はどのフェイズなのかを意識しよう。また、文章から情景をイメージできることも大事である。114E50の癌治療の状況説明では、その光景をイメージして、ポリクリで自分が見た光景と対比できましたか? これが苦手な人は小説を多く読もう。

 加えて、①:知識がなくても常識的に解ける問題、②:知識があるのに思いつかず解けなかった問題というのが本番で生じるが、①を増やして②を減らす訓練が必要である。①に関して、114D17(分娩合併症)や114D30(RAの生活指導)は産婦人科やリハ科の知識がなくても常識的に解ける。こうした問題が解けないなら、上述したように仲間と学習して自分の性格的な癖に気づいて修正する必要がある。

 ②に関して、個人的には114C34を間違えた。女性化乳房は女性ホルモン/男性ホルモン比が上昇して生じるため、肝硬変(女ホ↑)と精巣腫瘍(男ホ↓)は良いが、もうひとつをドパミン受容体拮抗薬でなくACTH単独欠損症を選んでしまった。PRLに関しては「PRL↑↑→ GnRH↓→ ゴナドトロピン↓→男ホ↓」というくらい、PRL ↑↑がないと、女性化乳房は認めない [2]。それが頭にあったことと、ドーパミンがPRLを抑制することは自ら論文に書いている(甲状腺癌が女性に多い理由とPRLの関係について [3] )のに失念していた。「ACTH↓ → 副腎刺激↓→ 男性ホ↓」を優先したからだが、思い返してみれば授業で自ら「男性の男ホのうち副腎由来はわずか5%」と言っていたのに忘れていた。こうした誤りは、試験を解いている自分、論文を書いている自分、講義している自分が乖離していることが原因であり、自己同一性を保持するためにも情報を一元化することが望ましい。一つの予備校についていくとか、あちこちの媒体をつまみ食いするなら自分のまとめノートに情報を一元化するなど。

 上記の小説に関して補足。今回、残念だった人は、いきなり勉強をリスタートするより、本格推理小説を犯人やトリックを自らあてるつもりで読むといいと思う。東田先生が「臨床問題は因果関係でなく果因関係だ、名探偵コナンと一緒だ」と話されたり、診断の神様が本の序文で「医療従事者はどこか探偵的で…」と書いているように [4]、臨床問題を解くというのは、結果を元に原因を探る作業に近いからである。えっ? 何から読んでいいかわからない? じゃあ、『斜め屋敷の犯罪』か『屍人荘の殺人』あたりから。

 なお、MACのホームページから「Topics」→「医学の勉強の仕方」の動画も参照されたい。私も出てますよ(⌒・⌒)ゞ。


[1] 自著「Dr.Kのスーパーフレーズ」(絶版w)等
[2] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10770986
[3] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30593422
[4] ティアニー先生の診断入門 第2版 医学書院



Dr.はやと

  国家試験受験生の皆さん、おつかれさまでした。国家試験当日のディスカッションに本格的に参加させていただいたのは今回が2回目でしたが、東田先生やDr.K、スタッフさんらとともに有意義な時間を過ごさせていただきました。

 いきなり初日のA問題では面喰いました。メジャー領域は比較的オーソドックスな問題が多いように思えましたが、新傾向のような問題が顔を出し、特にマイナー領域は難しい問題が多いように感じました。産婦人科の問題でも解答に難渋するものがいくつかありました。逆の見方をすれば、A問題以降は解きやすかったのではないでしょうか。必修問題(B、E)はいわゆる割れ問を除いては重箱の隅をつつくような奇問珍問はなかったように思います。最初に難易度の高い問題が揃って出されて心が折れないか、まさに受験生諸君のメンタルが試されているような構成でした。

 まず一番驚かされたのが英語問題です。以前は必修に一題だけ英語問題があるというのが国家試験の定説でしたが、114回医師国試はA31に登場して英語に拒否反応がある受験生の悲鳴が轟いたのを皮切りに、D63、E35、F22(F22は純粋な英語問題ではありませんが)と一気に英語が大挙押し寄せました。これは日本人医師の英語離れに警鐘を鳴らしているのであろうと思います。昨今の医療界は結局、論文で評価されるものです(この体制もどうなのか、と私は疑問に思いますが…)。大学の医局に属しても英語論文を書かない、そもそも英語論文を読まない。地方の病院に属すものであれば尚更です。その予防措置として大学によっては入学時、もしくは在学中のTOEFL、TOEICの点数獲得が必須となっているという情報も聞こえてきています。英語を甘くみないでほしい、という厚生労働省のお達しが見え隠れしています。少なくとも英語に拒否反応を示すのは避けた方がよいでしょう。

 さらに虐待や児童相談所に関する問題もB5、F13、F57と出題されました。法律改正直前の事項にはやはり注意を払うべきでしょう。あとはとにかく薬剤に関する問題が飛躍的に増えたということです。薬剤の継続使用や副作用に関して、それだけでなくそれぞれの薬の適応や効果・作用等も問われるようになってきています。薬への知識は深めるべきかもしれません。


 最後にCBTの聞き方のような問いもいくつか目にしました。「やらない検査はどれ?」「選ばないのはどれ?」のような、答えに明確な意味はそこまでないのだけれど、問いに対して的確でないためしょうがなく選ぶ選択肢というような類のものです。これにはやはり検査の意味を知っていてほしいということや、鑑別疾患の大切さを物語っているのは明白です。

 最短6年間で積み上げてきた情報量をどのように引き出すか、それには机上の勉強だけではなく訓練が必要です。問題を解くうえで、あるいは勉強会等を通じて『自分の中にある引き出しをうまく開けることができるのか。』それが最大のテーマであると私は考えています。


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