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国試を振り返って

Dr. 東田による講演(第114回の総括と第115回に向けての提案)

講演「第115回医師国家試験に向けて(第114回医師国家試験を振り返って)」Dr.東田(44分)

 


Dr.K

 

 第114回医師国家試験を受験された皆さま、お疲れ様でした。


 試験当日にMACに寄ったら、東田先生、はやと先生らが問題を解いていらして、私も加わらせていただいた。今回の国試も、受験生に対して程よい厳しさと優しさがあり、資格試験のあるべき姿として全般に歓迎される内容であった。
 
 さらに今回、必修が比較的容易だったことは素晴らしいと思う。第111回のように、必修で獣を罠にかけるような悪問が出題されて必修落ちが増えた場合、受験生としてはどれだけ優秀でも番狂わせで落とされる恐怖が生じ、いくら国試対策をしても安心できず、ポリクリ中でも国試対策問題を解いて目の前の実習が疎かになり、本来のポリクリ重視のための必修導入の意義が本末転倒になっていた。  

 これからの国試はむやみに低学年から対策せずとも、6年春~夏までは実習やクリクラに専念し、じっくり医学的素養を涵養し、その後に国試対策をすれば十分だしその方が合格確率も上がるだろう。ただ、国試対策にはコツがあり、孔子の言う「学びて思わざれば則ち罔し(くらし)、思いて学ばざれば則ち殆し(あやうし)」を意識すべきであろう。以下に詳述する。
 
「学び方」としては、あやふやな知識は無いのと同じで、いい加減にではなくカチッと覚えないといけない。膨大であるから、病態生理からアプローチしたり、ゴロを活用したりも有効であり[1]、縁があればイメージやこじつけによる覚え方も伝授したい。状況記憶も重要であり、ポリクリで体験すること自体が記憶に残る。今回、不合格だった方は勉強仲間を募って時々、出題し合うことが大事だと思う。独りでやるより印象に残るしモチベーションも高まるから。
 
 また、iPad動画等で勉強する人も増えたが、それを中心にするのはどうかと思う。ペンフィールドのホムンクルスで知られるように、脳は手に対応する領域が多いため、板書等で手を使うこと自体が頭を使うことになる。加えて、スマホ学習等で視野が狭いと記憶に不利になる(詳細は「記憶 視野」等で検索されたし)。もちろん、補助的学習としてネット動画を活かすことを否定はしない。

 「思い方」は東田先生のおっしゃる「思考力」と重なり、なかなか一朝一夕にはいかないが、例えば医療のゴールデンスタンダードは「非侵襲的な検査・手技から侵襲的へ」という流れであり、臨床問題を解く際に、今はどのフェイズなのかを意識しよう。また、文章から情景をイメージできることも大事である。114E50の癌治療の状況説明では、その光景をイメージして、ポリクリで自分が見た光景と対比できましたか? これが苦手な人は小説を多く読もう。

 加えて、①:知識がなくても常識的に解ける問題、②:知識があるのに思いつかず解けなかった問題というのが本番で生じるが、①を増やして②を減らす訓練が必要である。①に関して、114D17(分娩合併症)や114D30(RAの生活指導)は産婦人科やリハ科の知識がなくても常識的に解ける。こうした問題が解けないなら、上述したように仲間と学習して自分の性格的な癖に気づいて修正する必要がある。

 ②に関して、個人的には114C34を間違えた。女性化乳房は女性ホルモン/男性ホルモン比が上昇して生じるため、肝硬変(女ホ↑)と精巣腫瘍(男ホ↓)は良いが、もうひとつをドパミン受容体拮抗薬でなくACTH単独欠損症を選んでしまった。PRLに関しては「PRL↑↑→ GnRH↓→ ゴナドトロピン↓→男ホ↓」というくらい、PRL ↑↑がないと、女性化乳房は認めない [2]。それが頭にあったことと、ドーパミンがPRLを抑制することは自ら論文に書いている(甲状腺癌が女性に多い理由とPRLの関係について [3] )のに失念していた。「ACTH↓ → 副腎刺激↓→ 男性ホ↓」を優先したからだが、思い返してみれば授業で自ら「男性の男ホのうち副腎由来はわずか5%」と言っていたのに忘れていた。こうした誤りは、試験を解いている自分、論文を書いている自分、講義している自分が乖離していることが原因であり、自己同一性を保持するためにも情報を一元化することが望ましい。一つの予備校についていくとか、あちこちの媒体をつまみ食いするなら自分のまとめノートに情報を一元化するなど。

 上記の小説に関して補足。今回、残念だった人は、いきなり勉強をリスタートするより、本格推理小説を犯人やトリックを自らあてるつもりで読むといいと思う。東田先生が「臨床問題は因果関係でなく果因関係だ、名探偵コナンと一緒だ」と話されたり、診断の神様が本の序文で「医療従事者はどこか探偵的で…」と書いているように [4]、臨床問題を解くというのは、結果を元に原因を探る作業に近いからである。えっ? 何から読んでいいかわからない? じゃあ、『斜め屋敷の犯罪』か『屍人荘の殺人』あたりから。

 なお、MACのホームページから「Topics」→「医学の勉強の仕方」の動画も参照されたい。私も出てますよ(⌒・⌒)ゞ。


[1] 自著「Dr.Kのスーパーフレーズ」(絶版w)等
[2] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10770986
[3] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30593422
[4] ティアニー先生の診断入門 第2版 医学書院



Dr.はやと

  国家試験受験生の皆さん、おつかれさまでした。国家試験当日のディスカッションに本格的に参加させていただいたのは今回が2回目でしたが、東田先生やDr.K、スタッフさんらとともに有意義な時間を過ごさせていただきました。

 いきなり初日のA問題では面喰いました。メジャー領域は比較的オーソドックスな問題が多いように思えましたが、新傾向のような問題が顔を出し、特にマイナー領域は難しい問題が多いように感じました。産婦人科の問題でも解答に難渋するものがいくつかありました。逆の見方をすれば、A問題以降は解きやすかったのではないでしょうか。必修問題(B、E)はいわゆる割れ問を除いては重箱の隅をつつくような奇問珍問はなかったように思います。最初に難易度の高い問題が揃って出されて心が折れないか、まさに受験生諸君のメンタルが試されているような構成でした。

 まず一番驚かされたのが英語問題です。以前は必修に一題だけ英語問題があるというのが国家試験の定説でしたが、114回医師国試はA31に登場して英語に拒否反応がある受験生の悲鳴が轟いたのを皮切りに、D63、E35、F22(F22は純粋な英語問題ではありませんが)と一気に英語が大挙押し寄せました。これは日本人医師の英語離れに警鐘を鳴らしているのであろうと思います。昨今の医療界は結局、論文で評価されるものです(この体制もどうなのか、と私は疑問に思いますが…)。大学の医局に属しても英語論文を書かない、そもそも英語論文を読まない。地方の病院に属すものであれば尚更です。その予防措置として大学によっては入学時、もしくは在学中のTOEFL、TOEICの点数獲得が必須となっているという情報も聞こえてきています。英語を甘くみないでほしい、という厚生労働省のお達しが見え隠れしています。少なくとも英語に拒否反応を示すのは避けた方がよいでしょう。

 さらに虐待や児童相談所に関する問題もB5、F13、F57と出題されました。法律改正直前の事項にはやはり注意を払うべきでしょう。あとはとにかく薬剤に関する問題が飛躍的に増えたということです。薬剤の継続使用や副作用に関して、それだけでなくそれぞれの薬の適応や効果・作用等も問われるようになってきています。薬への知識は深めるべきかもしれません。


 最後にCBTの聞き方のような問いもいくつか目にしました。「やらない検査はどれ?」「選ばないのはどれ?」のような、答えに明確な意味はそこまでないのだけれど、問いに対して的確でないためしょうがなく選ぶ選択肢というような類のものです。これにはやはり検査の意味を知っていてほしいということや、鑑別疾患の大切さを物語っているのは明白です。

 最短6年間で積み上げてきた情報量をどのように引き出すか、それには机上の勉強だけではなく訓練が必要です。問題を解くうえで、あるいは勉強会等を通じて『自分の中にある引き出しをうまく開けることができるのか。』それが最大のテーマであると私は考えています。


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